
■二輪車のエキスパートから三輪・四輪型の車両開発に
新卒で輸送機器メーカーへ入社し、23年間オートバイの車体設計を行っていました。世界中で販売される量産モデルから先行開発モデル、特殊車両や電動車両等、さまざまなモデルを担当し、商品開発の上流である企画デザインから、下流工程である生産フォローまで幅広く実務経験を積んできました。
中国ローカル企業でオートバイ開発の技術顧問を経て、以前から親交のあった小型EVを開発する企業のYouTubeチャンネルに鳴海社長が登場していたことで偶然glafitを知ったのが、入社のきっかけです。
入社当初はシェアリング用の特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)など、量産型モデルの開発サポートをメインに行っていました。そのかたわらで三輪・四輪の特定小型原付の開発に着手し始め、現在はそちらが主体業務になっています。
これまで、大阪・関西万博でもデモンストレーション走行を行った四輪型特定小型原付「WAKU MOBI」や、「Japan Mobility Show 2025」でコンセプトモデルとしてお披露目した三輪型特定小型原付「P.E.T」「NFR-T1 Pro⁺」を担当しました。“16歳以上であれば免許不要で乗れる”という特定小型原付の利点が、多様化する生活スタイルや社会課題に応える可能性を提示し、業務提携や資金調達といったビジネス的な視点でも重要な役割を担うプロジェクトだと思っています。

■スタートアップらしいスピード感で取り組んだ「WAKU MOBI」
アイシンが開発中の姿勢制御技術を取り入れた「WAKU MOBI」には前型モデルがあり、そのプロジェクトがスタートしたのが2025年でした。これを「1号機」とすると、「2号機」である「WAKU MOBI」の完成に至るまで、嵐のような日々が続きました。
1号機はデザインコンセプトの決定後、単独でデザイン要件まとめからデザイナーとの折衝、内部構造の基本計画を行い、全部品の出図を3か月で実施しました。
過去の業務経験では到底実現できない開発日程にスタートアップらしさを感じ、今思い返すと、むしろ楽しんで業務に取り組んでいました。
もちろん、その後も問題は山積みでした。特に苦労したのは外装部品です。製造法案は3Dプリンター一択でしたが、大型造形品を短納期、かつ目標のコストで請け負ってもらえる手配先がなかなか見つかりませんでした。そしてようやく見つかった業者からは、素材が屋外での使用実績がないため、機能の保証ができないと言われる始末でした。
これは塗装メーカーで特殊なコーティングをすることで何とか対策することになるのですが、今度はそのメーカーから、3Dプリンター素材へのコーティング事例がなく、実際にやってみないとどうなるかわからないと言われてしまいました。残り時間から他の選択肢がないなか、何度も打ち合わせを重ね、試行錯誤の末にようやく完成させることができました。
デザインスケッチから車両完成までわずか6か月。この異例ともいえる短期間で仕上げた車両も無事に完成し、リリースターゲットであった記者会見では自らドライバーを担当しました。またその夜には、テレビ局へ車両を持ち込み生放送で紹介されるなど、なかなか経験することができない達成感のある日となりました。
また2号機の「WAKU MOBI」は、1号機で要望の多かったルーフと収納を追加する派生モデル的な位置づけながら、内部構造はかなり進化しており、骨格設計から見直しが必要でした。姿勢制御に影響しないようパイプを樹脂とアルミのハイブリッド構造にするなど、ルーフ周りの軽量化には苦労しました。
こちらは設計から車両完成まで4か月。万博展示という遅らせることのできない期限に対し、1号機以上にスピード感を持って業務に取り組めたと感じます。
幅の狭い四輪車は構造上、どうしてもカーブや傾斜路の安定性に課題がありますが、姿勢制御技術を搭載した「WAKU MOBI」は、全幅60cm以下と定められた特定小型原付でありながら、どのような走行状態・路面でも高い自立安定性を維持して走行できます。
低いシート高や足を高く上げずに乗り込めるステップ、アクセルを離すと自動でブレーキがかかるなど、免許返納後の高齢者の移動手段を意識した設計仕様と、あらゆる年代の方に乗りたいと思っていただけるようなデザインを両立させました。現在は利用シーン別でのニーズや課題把握などを行いつつ、将来的には自動運転の実装を見据えながら製品化を目指しています。
「乗り物が好き」という思いが強く、乗り物を通じて自己投資を続けてきた方、仕事を仕事と思わず没頭できるような方はglafitとの相性が良いと感じています。
スキルや実務経験が豊富な方はもちろんのこと、職務経歴に載らない技術や経験を活かしたい、結果を出すことにこだわりたいという思いが強い方にも、ぜひチャレンジしていただきたいですね。


